研究課題/領域番号 |
05301109
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
森際 康友 名古屋大学, 法学部, 教授 (40107488)
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研究分担者 |
出口 弘 国際大学グローバル, コミュニケーション・センター, 助教授 (60192655)
田島 正樹 東北芸術工科大学, 助教授 (20147490)
佐藤 俊樹 東京工業大学, 工学部, 助教授 (10221285)
猪木 武徳 大阪大学, 経済学部, 教授 (00107111)
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キーワード | 公共財 / 国民国家 / 世代間倫理 / 公共的意志決定 / コースの定理 / 社会的シンボル相互作用 / システムとしての知識 / 環境権 |
研究概要 |
1.本研究は、哲学、経済学、社会学及びシステム工学を主分野とする相関社会科学的観点から、開発と保全をめぐる社会倫理を支えている諸前提と主張を吟味し、擁護可能な環境保全の理念を、その制度的実現を考慮しつつ提起することを目的としている。 2.本年度は、グローバルで歴史構造的な問題である国際環境問題について、19世紀西洋社会における「社会」という公共空間の成立とそのマネジメント方式の展開と問題点、という角度から分析を試みた。新たな知見として、従来、外部性への対応の問題として経済学的に捉えられてきたいわゆる環境問題は、いったい誰が「社会費用」の手当をするのか、という問題を直視してこなかったために、さまざまな理論的実践的混乱が生じたことを明らかにした。 そもそも「社会費用」というものが内実のある概念であるのかどうか。また、社会とそれにふさわしい国家形式・生産方式が成立したならば、この新たなシステムのもとで外部性を内部化するコストを社会の各プレイヤーがいかに負担・分配すべきであるのかが議論されねばならなかったにも関わらず、責任の所在が不明確なままに、「公害」という手遅れの形になるまで、これらの問題群が整理されず、応えられもしなかった。この間の社会的機序を、問題を非意図的に成立した「社会」を自覚的に捉えなおし、誰がどのような役割を果たすことによって、社会全体をマネージしていくべきであるのか、という観点から考察することによって望ましい研究方向を明らかにした。すなわち、環境理念の構想のためには、国家や自然だけでなく、社会にも焦点を当てて対応するべきである。その理念実現へのアプローチは、市場論的アプローチの長所を生かしつつ、その制約を乗り越えるための制度設計をもたねばならない。そのために、リベラルな社会正義概念の意義と限界を確定しつつ、それに基づく再分配原理を探求するべきである。
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