研究課題
総合研究(A)
本研究は、高降伏点TMCP鋼(YP420〜500MPaクラス)の大型海洋構造物への適用拡大を目指し、設計概念ともうまく融合した高降伏点高強度鋼の溶接構造における破壊性能評価手順を確立することを目的として実施した。研究の重点は、巨視的に強度・靭性不均質の避けがたい溶接部の破壊靭性評価はいかにあるべきか、また、それらの影響を考慮したときの溶接部材料選択はいかにあるべきかを明らかにすることにあり、解析的・実験的検討によって破壊靭性試験結果と継手破壊性能とを定量的に対応づける手法を開発した。本研究で得られた主な成果は以下のとおりである。母材と溶接金属の強度ミスマッチ、とくに、溶接金属の強度オーバーマッチは、靭性劣化が問題となる溶接熱影響部(HAZ)に次のような影響をもたらす。HAZ靭性が比較的良好な場合には、強度オーバーマッチはHAZで脆性破壊が発生する以前に低強度の母材側に選択的な塑性変形をもたらすため、き裂成長の母材側への湾曲現象が現れ、その結果としてHAZの破壊限界が見かけ上高くなる。しかし、HAZの靭性劣化が著しい場合には、強度オーバーマッチはHAZの塑性変形を拘束し、HAZにおける局部応力を上昇させるために同じ入熱条件で作製した等質継手(溶接金属強度≒母材強度)の場合よりもHAZの破壊発生抵抗を低下させる。溶接継手の破壊性能評価においては、強度ミスマッチによる塑性拘束に加え、評価に用いる試験片の形状や寸法に応じた幾何学的塑性拘束にも注意することが必要で、強度ミスマッチ範囲が25%程度以内ならむしろ後者の幾何学的塑性拘束の影響の方が大きい。本研究では、このような塑性拘束の破壊特性に果たす役割をふまえ、三点曲げ靭性試験結果に基づく継手破壊性能の予測手法を開発するとともに、構造性能確保のための材料の必要破壊靭性値の決定手順を提示した。
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