研究概要 |
まず基礎的研究として,地球環境に大きな影響を与える噴火とは何か,またどのような研究が今後肝要かについての討論を行い,指針を設定することができた.その結果,この種の研究には火山学,第四紀学,テフロクロノロジー,氷河氷科学,年輪年代・気候学,堆積学,気候学など,異なった諸学際分野の協力が必須であることが確認された. 歴史時代の諸例をもとにすると,テフラ噴出量は100km^3,エアロゾル噴出量は10^<12>gを越すものが地球環境にとってもっとも重要であることがわかった.このため当初予定した過去の爆発的噴火のカタログは,この種の大規模噴火を選定し,できるだけ多数のデータを盛り込むように設定した.本研究の目的達成のためには編年研究は従来のものでは不十分で,より高精度の年代決定を目指す必要があり,このために測定法の改良,年輪科学,氷河氷科学などの適用が試みられ,二,三の事例研究が行われた.また噴出量推定の精密化も重要な課題で,多数の日本の事例に関して従来のいくつかの方式による比較,新しい方式の考案が研究された.これらをもとにデータベースの形式と諸項目の測定,記入の方法が改良され,日本の完新世噴火については入力ほぼ完了,ニュージーランドなどについては準備を終えた.同定の基礎としてのテフラをなす火山ガラスの化学分析も多数例について行われ,新しい基礎が得られ,かつ西日本から東日本にかけて分布するテフラの新知見が得られた.南極の氷の分析は,過去約200年について酸性度の測定を中心として行われ,その結果この間5,6例の噴火と気候の記録が得られた.氷河氷や年輪に刻まれた噴火指標をみると,どこの火山の噴火かわからない例がかなりある.たとえばAD1809.これからみると,遠隔地でおこった,しかも時代の古い噴火については,まだ相当多数の事例が詳しく研究されずに眠っていることが示唆される.
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