研究分担者 |
山崎 常行 九州大学, 理学部, 教授 (10108649)
井出 雄二 東京大学, 農学部, 助教授 (90213024)
伊藤 哲 宮崎大学, 農学部, 助手 (00231150)
玉泉 幸一郎 九州大学, 農学部, 助手 (80205062)
白石 進 九州大学, 農学部, 助教授 (70226314)
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研究概要 |
最初に,ヤツガタケトウヒ(Picea Koyamae)について,保全を考える上での考慮因子として,分類及び系統上の位置づけを行った。まず,DNA分子マーカーの一つであるRAPD法とSSCP法を用いて,トウヒ属植物(6種1変種)について系統進化の解明を試みた。その結果,トウヒ属をハリモミ節とトウヒ節の2節に分けている現行の分類を再考する必要のあることが明らかになった。また,ヤツガタケトウヒは,ヒメマツハダと極めて近縁であることがDNAレベルでも確認された。この両樹種は混生し,種間雑種と思われる個体が多数存在しており,DNA分析の結果からも,両種間の雑種の存在が明らかとなると共に,両種で遺伝子移入が行われている可能性のあることが強く示唆された。 次いで,屋久島に生育するヤクタネゴヨウについて生存環境調査を行った。この樹種は屋久島と種子島にだけ生育する五葉松であるが,近年個体数が急激に減少している。そこで,下屋久営林署管内の比較的平坦な地区を主に調査対象地とし,その分布域と現存個体数及び更新様式を明らかにした。分布域では,これまで確認されていなかった標高800m域までの生存を確認できた。生育個体数では,従来確認されていない集団が数カ所確認でき,今後詳しい調査を継続することの必要性が示唆された。しかし,いずれの集団もマツノザイセンチュウ病による枯死木が発見され,現状のまま放置すれば個体数の激減は免れないと判断される。更新様式では,分布様式が集中分布型を示し,サイズ構成が集団毎に類似し,さらにギャップ内にだけ稚樹の存在が確認できたので,完全なギャップ更新樹種であると推測された。
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