研究課題
平成6年度は前年度のファントム実験、臨床的研究のデータを基にして、この間の技術的進歩も加え、さらなるMRAの診断精度の向上を検討した。基礎的な研究としては、脳動脈瘤ファントムを用い、描出能向上のための撮影条件の検討を行った。その結果、動脈瘤内の渦流による信号強度の変化がとらえられ、撮影条件の選択に有用であった。また、Fcard-PC法やPresaturation法などの異なった方法を用いた流速測定の検討ではファントム実験で高い測定精度であることが示された。生体への初期の応用も試みられ、門脈などの腹部への応用が期待された。頭部においては、前年度までの研究をさらに進めた数多くの報告がなされた。動脈瘤の診断精度の研究ではMIP画像に加え元画像を読影することにより、動脈瘤の検出能がある程度上がることが示された。ただし個人差が大きく、必ずしも向上しない場合もあった。高分解能MRAやsurface rendering法といったMIP法以外の画像処理法、さらにはSORS法と呼ばれる新しいMTC画像の有用性についても検討した。一方、胸部では究極の目標の一つであった冠動脈のMRAの初期経験が示された。Segmented turbo FLASH法を用い、鮮明な冠動脈の描出が得られており、近い将来臨床応用に伴い、この領域における患者管理に多大の効果を与えるものと期待される。腹部では先に述べたように流速測定の意義が検討された。下肢の閉塞性動脈病変では、すでにMRAがスクリーニングに用いることのできるレベルに達していることが示されていたが、さらにprospectiveな研究において確認された。以上のように平成6年度の研究計画は大部分達成されたばかりでなく、それ以上の研究の広がり、発展がみられた。
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