腎臓の分子生物学的研究-構造と機能の相関の分子レベルでの解明

1993 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05304037
• 研究機関: 東京医科歯科大学
• 研究代表者: 丸茂 文昭 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (00050443)
• 研究分担者: 酒井 紀 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (40056560) ; 小出 輝 順天堂大学, 医学部, 教授 (80052968) ; 黒川 清 東京大学, 医学部, 教授 (30167390) ; 奥田 誠也 九州大学, 医学部, 教授 (80158823) ; 荒川 正昭 新潟大学, 医学部, 教授 (80069012)
• キーワード: Molecular biology / Nephrology / Cloning / Glomerulus / Nephron / Transporter / Basement membrane / Hormone

研究概要

各斑員は予定通りに研究を進め、成果は出てきている。本年は大きく3つのテーマについて研究を行なった。即ち1)糸球体マトリックスと糸球体機能、2)生理活性物質とその受容体の制御、3)尿細管輸送体の同定と制御である。
1)については特に基底膜コラーゲンの異常と疾患との関連について研究を進め、アルポート症候群やthin membrane nephropathyの患者において基底膜コラーゲンの遺伝子に異常があることを示すことが出来た。今後はこの異常がどのような機序によって基底膜の全体の透過性を変化させて行くのかを明らかにする予定である。
2)については尿細管、さらには傍糸球体装置細胞(J.G cell)における局所でのレニン・アンギオテンシン系について研究を行い、局所でのレニンならびにアンギオテンシンの産生とその調節を明らかにした。またレニン分泌の分子レベルでの研究を進めるためにJ.G cellのcell lineの確立を目指しているが、まだ継代可能なcell lineの作成には成功していない。
3)については腎特異型C1チャネルについて研究を進めた。2種類のC1CK_1とC1CK_2と名付けたC1チャネルのクローニングに成功し、その組織分布を免疫染色で、またチャネル機能をアフリカツメガエル卵での発現実験により検討した。この結果はC1CK_1はHenleループの太い上行脚のC1チャネルであることが証明された。今後はさらにこのC1チャネルの構造と機能、また他のC1チャネルのクローニングなどの仕事を進める予定である。
平成5年度の研究の総括と今後の研究の検討のため、斑員全員が平成6年2月5日に集り、斑会議を行い今後の研究の進め方を討議決定した。

研究成果

• [文献書誌] OWADA,A.,et.al.: "Decreased Lithium Clearance in Patiects with Hyperthyriodism." Nephron. 64. 37-41 (1993)
• [文献書誌] KOIKE,J.,et.al.: "Effect of Urodilatin on cGMP Accumulation in the Kidney." J Am Soc Nephr. 3. 1705-1709 (1993)
• [文献書誌] UCHIDA,S.,et.al.: "Molecular Cloning of a Chloride Channel That Is Regulated by Dehydration and Expressed Predominantly in Kidney Medulla." J Biolo Chem. 268. 3821-3824 (1993)
• [文献書誌] SASAKI,S.,et.al.: "Cloning and expression of two renal transport proteins which are involved in urinary concentration mechanisms:collecting duct water channel and thin ascending limb chloride channel." John Libbey Eurotext. 325-335 (1993)
• [文献書誌] YANG,T.,et.al.: "Effect of hyperosmolality on production and mRNA expression of Et-1 in inner medullary collecting duct." Am Phys Soc. F684-F689 (1993)
• [文献書誌] TOMITA,K.,et.al.: "Effects of Et-1 on water and collecting ducts of the rat." Am Phys Soc. F690-F696 (1993)
• [文献書誌] FUSHIMI,K.,et.al.: "Cloning and expression of apical membrance water channel of rat kidney collecting tubule." Nature. 361. 549-552 (1993)