研究分担者 |
青野 敏博 徳島大学, 医学部, 教授 (50028445)
友田 豊 名古屋大学, 医学部, 教授 (60023769)
佐治 文隆 大阪大学, 医学部, 講師 (90093418)
藤田 潤 京都大学, 医学部, 教授 (50173430)
高橋 迪雄 東京大学, 農学部, 教授 (30011943)
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研究概要 |
まず正常機能におけるサイトカインの意義について検討した。中枢においては、アクチビンA(EDF)のゴナドトロピン分泌機構における意義を検討した。ラットを用いて初代下垂体前葉細胞からのFSH分泌に対する影響を見ると、EDFにはプロゲステロン(P)及びテストステロン(T)によるFSH分泌促進効果をさらに促進する作用が認められた。卵巣における性ステロイド産生能についての検討では、培養顆粒膜細胞からのLH刺激によるP産生は、IL-1,TNFα,IFNγ等で著明に抑制されたが、IL-2,IL-3,IL-6,M-CSF,G-CSFでは変化は見られなかった。また子宮においてもIL-1,TNFαは培養内膜間質細胞の分化を抑制する作用が明らかとなり、またIFNγでは細胞増殖が抑制された。卵巣や子宮内膜での抑制作用については細胞内Ca^<2+>やcAMPとの関連を検討中である。ヒト子宮内膜では免疫細胞のみならず内膜細胞自身が各種のサイトカインを分泌することが示された。培養細胞系でM-CSF,SCF,LIFやこれらのレセプターについて遺伝子レベルで検討したところ、Pで誘導される間質細胞の分化に伴ってM-CSFとそのレセプターc-fmsはいずれもがPの用量依存性に増加していた。胚や胎盤の増殖との関連で注目されているSCFについてのmRNAでの検討では、増殖期、分泌期での変化は見られなかったが、そのレセプターc-kitは増殖期に強く発現していた。他方、着床との関連が示唆されているLIFは、分泌期子宮内膜で増加していた。LIFレセプターは子宮内膜細胞にはなく、絨毛細胞や免疫細胞がその標的と考えられる。これらの変化については特異抗体を用いた免疫組織化学やin situ hybridizationでもさらに解析中である。正常妊娠胎盤絨毛細胞からのhCG産生にはM-CSF,LIF,IL-6などが深く関わることが明らかとなっており、これらのレセプターも証明されている。今年度特にIL-6について細胞内シグナル伝達を詳細の検討したところ、チロシンキナーゼ経路が活性化されhCG分泌が亢進することが判明したため、さらに他のサイトカインにおける機序も引き続き検索中である。また絨毛癌細胞でもc-fmsが発現していることを見いだしその増殖やhCG産生との関連が注目されたが、M-CSF添加培養実験では有意な影響は見られなかったため悪性化に伴うレセプター構造以上が示唆された。この悪性化とc-kit構造異常については、遺伝子レベルで解析中である。さらに新たに発見された細胞増殖因子で、テラトカルチノーマのレチノイン酸に寄る分化系で発現し増強するmidkine(MK)の発現とその意義に関する基礎検討からは、レセプター結合部位が判明し、またMKをテラトカルチノーマ幹細胞P19に添加すると、神経細胞への分化が誘導されることが判明した。
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