研究課題
小児肝癌治療成績向上のために統一プロトコールによる治療を行い、その治療効果を中心に検討した。治療プロトコールとしては、切除可能な肝の2区域まで占拠する腫瘍をみとめる症例では、腫瘍摘除前に動注化学療法を行う91A1と、これを行わない91A2にランドマイズし、術前動注療法の有効性を検討する。Day 1 CDDP 40mg/m^2 1時間投与、Day2 THP-ADR30mg/m^2one shotとして、これを28日毎6コース施行する。また、切除困難あるいは切除不能な肝の2区域を越えて占拠する腫瘍あるいは遠隔転移をみとめる症例では、動注療法を行う91B1と静注療法を行う91B2について有効性を比較検討するものである。Day 1 CDDP 80mg/m^2/day 24時間投与、Day 2 THP-ADR 30mg/m^2/day 48時間投与(計60mg/m^2)として、これを28日毎6コース施行するが、摘除手術は2コース後として、その後は静注とするものである。1992年6月以来登録例は79例であるが、うち治療後6ヵ月以上経過して追跡調査が行われた50例中脱落例5例を除く45例について治療効果、副作用について検討した。切除可能例を対象としたプロトコール91A1は10例(A1は5例、A2は5例)に行われ、全例健存である。切除困難あるいは不能例を対象とした91Bは35例(B1は7例、B2は28例)に行われ、B1では成人型を除く6例中5例、B2では肝芽腫28例中23例に術前評価でPRがえられた。1例は敗血症で死亡し、3例は腫瘍により死亡し、B2の累積生存率は82.5%であった。B1とB2間での効果、副作用の差は明らかではなかった。本研究の目的の一つである動注の効果を明らかにするためにはB1症例のさらなる集積が必要と考えられた。また、病理組織学的あるいは遺伝子学的検討より、本症の腫瘍特性も明らかにされつつあるが、この方面の更なる検討も必要と考えられた。
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