沿岸域エコトーンの生態学的特性と環境管理の基礎研究

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05304052
• 研究機関: 東京水産大学
• 研究代表者: 有賀 裕勝 東京水産大学, 水産学部・資源育成学科, 教授 (10017022)
• 研究分担者: 鈴木 邦雄 横浜国立大学, 経営学部, 教授 (30018048) ; 岡崎 正規 東京農工大学, 農学部, 助教授 (00092479) ; 山口 征矢 東京水産大学, 水産学部, 教授 (70114220) ; 大槻 晃 東京水産大学, 水産学部, 教授 (30101041) ; 小倉 紀雄 東京農工大学, 農学部, 教授 (30015127)
• キーワード: 沿岸域エコトーン / 懸濁有機物炭素安定同位体比 / 脱窒速度測定法 / 熱帯泥炭土壌 / サゴヤシ / パイライト / 人間活動分布 / 環境資源利用

研究概要

(1)多摩川河口、東京湾内湾域における懸濁有機物(POM)の挙動を炭素安定同位体比(δ^<13>C)により検討した。陸起源POM、河口域POM、内湾域POMのδ^<13>C値はそれぞれ-26.0,-25.3,-19.7‰であった。東京湾内湾堆積有機物のδ^<13>C値は20.5‰で内湾域POMの値を良く反映していた。
(2)付着微生物群集の脱窒速度簡易測定法を検討した。アセチレン飽和溶液添加法に代わって、100ml試水に1mM程度の炭化カルシウムを加えると、アセチレンの生成は量的に進行するが。水酸化カルシウムの生成によりpHが12以上に上昇し、微生物の活動を停止させることが明らかになり、これを中和する緩衝溶液の選択が必要であることが判明した。
(3)熱帯泥炭の特性及びサゴヤシの持続生産の可能性を探ることを目的として、銅及び亜鉛を指標としたモニタリングを研究した。サゴヤシ栽培地の銅及び亜鉛の循環は、銅については降水からのインプットがアウトプットを上回るために系内に蓄積する傾向にあるが、亜鉛は系外に流失する傾向にあることが明らかになった。
(4)熱帯沿岸域湿地林荒廃地において、下層のパイライトの酸化による表層酸性化作用を防止する方策として下層の石炭礫を埋設した結果の試験を行い、これが14年間にわたって持続的酸性中和効果を示すことを明らかにした。
(5)人間活動と環境資源利用の相互作用特性を明らかにするため、理論モデルを構築し、数値シミュレーションを試みた。その結果、環境資源の最適利用形態は地域の人口規模や分布とも密接な関係をもつことなどが明らかとなった。

研究成果

• [文献書誌] 星 純也,小川浩史,小倉紀雄: "東京湾河口・内湾表層水中の粒経の異なる懸濁態アミノ酸の分布と挙動" 地球化学. 28. 1-14 (1994)
• [文献書誌] 小川浩史,小倉紀雄: "夏季東京湾における懸濁態および堆積有機物の炭素安定同位体比" 地球化学. 28. 21-36 (1994)
• [文献書誌] Y.Yamaguchi,S.Rakkheaw,S.Angsupanich&Y.Aruga: "Seasonal Changes of the Phytoplankton Chlorophyll a and their relation to suspended solid in Thale Sap Songkhla,Thailand" La mer. 32. 31-39 (1994)
• [文献書誌] C.Yamaguchi,M.Okazaki,&T.Kaneko: "Sago,Palm growing on tropical Peat soil in Sarawnk ,with special reference of copper and zinc" Sago Palm. 2. 21-30 (1994)
• [文献書誌] K.Yonebayashi,M.Okazaki,J.Pechayapist,P.Vijarnsorn,A.B.Znhari&K.Ryuma: "Distribution of heavy matals among different bonding forms in tropical peat soils." Soil Scince and Plant Nutrition. 40. 425-434 (1994)
• [文献書誌] 高井康雄 他: "汽水域における塩類濃度と生物に対する作用" 日本海水学会誌. 48. 337-345 (1994)
• [文献書誌] 小倉紀雄(分担執筆): "海洋環境を考える" 恒星社厚生閣, 193 (1994)
• [文献書誌] 山口征矢(分担執筆): "海洋環境を考える" 恒星社厚生閣, 193 (1994)