研究概要 |
脊椎動物には3次元的生活空間を営む生物(以後,3次元行動生物と略す)には魚類,両性類,鳥類,哺乳類の一部があり,その他の多くの生物は2次元的な生活を営なんでいる.これらの動物は重力空間で行動するという意味ではそれぞれ固有のストラテージを持っており,固有の行動様式を持っている.これらの生物に共通な外力(生存条件,不可避的条件)は重力である.地球上に棲む限りに於いてこのことは等しく共通の条件であるために,特別の環境下か特殊な個体で無い限り問題にされることは無い.一度特殊な環境,例えば重力の無い宇宙環境に生物が晒された時,そこには多くの解決しなければならない問題が生じると共に,我々にとって重力とは何であるかを再考しなけばならない.実験的微小重力環境下における視覚,前庭両感覚の協応関係の順応過程を明らかにする. 平成7年度では,長期プリズム環境下での金魚の行動を主として検討した.前年度に4種類の異なった条件で飼育された個体の中から2個体づつ(計8匹 )を選んで,頭骨に上下逆転プリズムを固定し視覚的に長期順応を行う(視覚的上下反転個体).この間の順応プロセスを映像記録された行動から分析する.この目的を達成する為に水中でも全反射面を持ち得る高屈折光学ガラスによる微小プリズムを作製した.一定期間順応期間を経た視覚的上下反転個体を含む全ての個体を短時間の低重力空間,あるいは直線加速度負荷装置上で過重力条件に晒しその間の行動を映像記録し分析した.今後は,全ての個体の視覚神経経路及び前庭神経経路のうち主な経路について,形態学的および神経解剖学的なトレースを行う予定である.
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