研究課題
本研究の目的は、日本古代の宮殿遺跡に関する図面データを解析図化機を用いてデジタル・マップ化し、その変遷・地域差等を比較検討するとともに、コンピュータ・グラフィックスによって地形や建物の復原を行い、古代律令制下における土木建設に関する計画手法を解明することである。本研究に先行して、奈良国立文化財研究所では、1989年から1992年にかけて、遺跡の発掘調査から復原整備に至る過程で発生する膨大な図面資料の体系的整理・管理の一方途として、解析図化機とコンピュータを用いて発掘遺構図のデジタル・マッピングに関する研究を試験的に実施した経緯がある。この試験的研究が残した最大の課題は、異なる宮殿遺構の規模や配置、構造について相互に比較検討するためには、図形データを目的に応じて適切に加工するためのシステム開発が必要不可欠だということであった。したがって、冒頭で述べた本研究の目的を達成するためには、上記の加工システムの開発が当面する必須の課題となるのである。初年度である平成5年度は、解析図化機を用いて読み取った遺構図のデジタル情報を既存の汎用ワークステーションに移行させ、データの編集・加工プログラムの骨格を作成した。編集の面では、解析図化機上では煩雑をきわめるデータの修正作業の簡便化をはかり、加工の面では、データの軽量化によって遺構の模式図を作成したり、遺構の属性変更を簡易に行えるようにして遺構の種別や時期別による画面表示が行えるようにした。なお、上記の作業は(株)構造計画研究所に依頼して行ったものである。今後は、上記のシステムの機能アップをはかるとともに、高度な図形処理を行うためのワークステーションやビデオ等の機器を新規に導入することも必要となろう。