研究概要 |
本年度は,共通1次高得点者(昭和54年度〜平成元年度までの共通1次5教科合計点上位100番以内の現役受験者)643名中,東大・京大の各大学卒業者名簿に登録されていた222名に郵送法による,アンケート票調査を実施した。『大学入試における能力の評価と育成に関する調査票』と題するアンケート票の回収数は70名で,回収率は約32%となった。 調査項目は,小学校から現在に至るまでの活動や適応の状況を把握するために,(1)フェースシート(性別,高校卒業年,共通1次の得意・不得意科目,入学大学・学部,学部卒業年,大学院進学の有無・専攻分野)(2)「高得点を上げた理由」設問(受験学力に対する本人の自己評価を尋ねる趣旨の設問),(3)「高校時代と大学時代の勉学観の違い」,(4)「大学・大学院の専攻分野と現在の仕事との関連」,(5)「現在の仕事に対する適応観」,(6)「高校以前の勉学以外の活動度」,(7)「高学力と家庭環境の関連度」,そして最後に,(8)「入試で評価されるべき能力への提言」から構成した。 回収者70名に関する限り,主要な知見は以下の通りであった。 (1)現在の職業は、大学教官,大学医師,会社の研究開発職,公務員が目立った。 (2)高得点を上げた自己の能力観としては,記憶力,集中力,パターン認識力のなどの知的技能を挙げる例が目立った。 (3)大学での勉学観については受験勉強へのコミットメントが強い分,高校までの勉学観とかなり違和感を感じた例が多かった。 (4)現在の仕事については,大学教師や大学医師を除き,大学・大学院教育との関連を直接的に指摘する傾向は強くなかった。 また,現在の仕事に対する自己の能力の適応観は,知的側面については適しているという回答が多かった。 (5)高校以前の勉学以外の活動については,受験勉強一辺倒の生活を指摘する者は少なく,別の活動を熱心にこなす余裕派も少なくなかった。 (6)高学力と家庭環境との関連については,積極的に肯定するケースも少なくなかった。 (7)入試時点で評価される能力としては,ほとんどが知識記憶の能力は否定し,論理的思考力,課題解決力,表現力などを提案するケースが多く目についた。 以上,高得点者への記述式アンケートを実施した結果,その回答内容そのものに回答者の論理的思考力の高さを感じることができた。
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