ASTRO-D衛星を用いた宇宙X線背景放射の観測的研究

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05402002
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 牧島 一夫 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教授 (20126163)
• 研究分担者: 大橋 隆哉 東京都立大学, 理学部, 助教授 (70183027) ; 田代 信 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (00251398)
• キーワード: X線天文学 / 宇宙X線背景放射 / X線検出器 / 科学衛星 / 深宇宙探査

研究概要

1993年2月20日に打ち上げられたX線天文衛星「あすか」(ASTRO-D)は、本年度も軌道上で順調に稼働を続けている。本年度は昨年度に引続き、「あすか」に搭載された位置検出型蛍光比例計数管(GIS)を用いて宇宙X線背景放射(CXB)の究明が進められた。以下に要約されるように、研究は大きく進展しつつある。
1.GISの較正が精力的に進められた。具体的には、(1)エネルギー応答、(2)ゲインの位置依存性および時間変化、(5)望遠鏡と組み合せた位置応答、(6)バックグラウンドの性質、(3)測光性能およびフラットフィールド特性、(4)時間計測の特性、などの詳細な較正に成功した。
2.GISデータ解析ツールが大幅に増強された。(1)自己相関を用いた点源の検出アルゴリズム、(2)画像とスペクトルを順問題として同時にフィットするためのモンテカルロ法、(3)ターゲット天体を除いた視野を利用して無バイアスのサーベイを展開する方法、(4)ブランクスカイのデータからバックグラウンドを構築する方法、などが相次いで開発されている。
3.CXBのスペクトルが0.7-10keVの全域で光子指数1.4に合う、という昨年度の見通しが、より確実になった。これは、<2keVで光子指数が急になるというROSAT衛星の結果を否定する。
4.CXBに寄与すると思われる候補天体について、以下のように知見を深めた。(1)新たにM51、NGC1097などの銀河の中に弱い活動中心核を発見した。(2)遠方のクエーサーのスペクトルの傾きが、一般にはCXBと一致しないことを見いだした。(3)上述の無バイアスサーベイを利用して、LogN-LogSに強い制限がつけられつつある。
5.銀河面放射、電波ローブからの逆コンプトン放射、銀河団の中心部における温度の異なるプラズマの住み分けなどの新しい知見を通じ、宇宙空間における磁場の役割が重要であることが晃かにされつつあり、それとCXBの関係が考察されている。

研究成果

• [文献書誌] Makishima,K.: "Discovery of an Obscured Low Luminosity Active Nucleus in NGC4258" Publ.Astron.Soc.Japan,Letters. 46. L77-L80 (1994)
• [文献書誌] Fukazawa,Y.: "The Fluorescence-Dominated Spectrum of the Spiral Galaxy NGC6552" Publ.Astron.Soc.Japan,Letters. 46. L141-L146 (1994)
• [文献書誌] Reynolds,C.S.: "The Reflection-Dominated Spectrum of NGC6552" Monthly Notices of Royal Astronomical Society. 268. L55-L59 (1994)
• [文献書誌] Fabian,A.C.: "Fe-K Emission from the Hidden Quasar IRAS PO9104+4109" Astrophysical Journal,Letters. 436. L51-L54 (1994)
• [文献書誌] Makishima,K.: "ASCA Observations of Galaxies" Proc.New Horizon of X-ray Astronomy. 1. 171-180 (1994)