半導体結晶中の電子的素励起である励起子や励起子分子は、近似的にボ-ズ粒子と見做される。レーザー光の様な光子密度の高い光で結晶を励起してこれらの粒子を高密度に作ると、ある密度でボ-ズ凝縮が起こると言われている。本研究の目的はこの解釈の妥当性を実験的に吟味することである。平成6年度の研究実績は以下のとおりである。 1.CuClの励起子、励起子分子系において (1)励起子の二光子励起法によって、空間的に一様な励起子分子の励起を行い、そのもとでの位相共役波信号の観測を行った。今のところ、密度不足のせいか信号の増強は観測されていない。 (2)励起子、励起子分子系の安定性を評価するのに必要な励起子の束縛エネルギー等を実験的に精密に評価した。 (3)励起子分子の二光子吸収過程に関する、新しい理論を実験的に検証することに成功した。この新しい理論から、励起子分子の二励起子ポラリトン崩壊機構を再考し、その枠組みから励起子分子のボ-ズ凝縮と観測されている光学現象との関係を論じる糸口を見つけた。 2.Cu_2Oの励起子系において (1)励起子を二光子励起することにより空間的に一様な励起子を生成する手法を開発した。 (2)励起子の二光子励起における非線形偏光選択則を観測し、CuClの励起子分子において非線形光学現象を用いて行ったボ-ズ凝縮の観測をCu_2Oの励起子系に応用する糸口を見つけた。 (3)励起子を高密度に励起したときその運動量空間での分布がボ-ズアインシュタイン統計にのることを確認した。
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