研究分担者 |
斉藤 軍治 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授 (40132724)
加藤 礼三 東京大学, 物性研究所, 助教授 (80169531)
長田 俊人 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教授 (00192526)
和田 信雄 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (90142687)
|
研究概要 |
本研究の目的は,有機導体における低次元電子系の状態の特徴を,電子相関の大きさとの関係に注目して解明するものである。物性科学における本研究の意義は,単に低次元電子系の性質を解明するというだけでなく,分子修飾,圧力印加,強磁場印加などによる物性制御を試みるということにある。具体的には,BEDT-TTF分子を主体とする2次元的導体,TMTSF分子およびDCNQI分子による1次元的導体を対象とし,極低温における,相転移などにかかわる電子状態の変化とその変化のメカニズムを,強磁場下の電気伝導測定などによって探究した。(BEDT-TTF)_2KHg(SCN)_4においては,高圧下の角度依存磁気抵抗振動によって,低温域で現れるいわゆる異常相の起因を明らかにした。5キロバ-ル程度以下の圧力域で生じている異常相の原因が,この物質がもつ電子系のうちの1次元的部分に生じるパイエルス不安定性が、2次元的部分を再構成することによって生じることを明らかにした。さらに,磁場が2次元面に平行に近いときに現れる磁気抵抗の角度依存性の異常は,2次元的電子系のフェルミ面の閉軌道によるものであることを初めて解明した。1次元的な(TMTSF)_2Xでは,角度依存磁気抵抗振動に現れるあらたな振動現象の起因が,やはり閉軌道であることを明らかにし,これを「第3の角度依存効果」と名付けた。1次元的な(DMe-DCNQI)_2Cu系物質では,炭素原子と窒素原子の同位元素置換が金属-絶縁体転移におよぼす効果を調べ,銅原子のまわりの原子集団の挙動が,この物質の電子系の性質に大きい影響を与えることを発見した。これは,この物質の電子相関をもつ低次元系の性質を記述するモデルと符合する結果であり,今後,金属絶縁体転移と電子相関の関係をミクロに理解する上で大事な手がかりになる。
|