我々の目標は、極薄いチタン酸バリウム膜の誘電的な振舞を観測し、その物性が、固体物性の理論によりどのように説明されるかを知ることにある。特に、薄膜になると成長方向の構成数が減少するためにその方向の双極子相互作用が有限の数について考慮する、いわゆるサイズ効果が支配する。この物質の相転移の振る舞いを決定することが相互作用を解き明かす上で重要である。 チタン酸バリウム薄膜は、MBE法によって作製した。酸化物の成長を行うために、ヒーター周りなどに特別な配慮をした成長装置を準備した。バリウムはセルから、チタンは電子ビームを用いる方法を採用した。各蒸着源にはシャッターを取り付け、同時蒸着と共に交互蒸着法も検討した。その結果、フラックスの制御を行うことが化学量論比からみても、結晶性から見ても重要であることが分かり、その条件も見い出した。 一方、X線回折法を用いて、成長方向と面内の2種類の構造情報を得た。そのなかでも、成長方向には、ラウエ関数に起因する強度の振動が観測され、非常に均一な膜厚が実現していることが分かった。また、それぞれの方向の格子定数は、面内が基板に整合し、それにともなって成長方向が伸びている。これらの結果より、得られた薄膜はかなり理想的に近いエピタキシャル薄膜であると考えている。 得られたチタン酸バリウム薄膜の誘電率を測定したところ、極薄い領域で誘電率の低下が観測された。現在の所、現象論的に界面において誘電率の低い部分ができていることが結論づけられている。今後、この原因を究明し、極薄の誘電体薄膜の誘電的性質や、構造相転移に関する性質を調べていく予定にしている。
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