研究概要 |
螢光X線分析装置の自動試料交換機を購入したことにより、全岩化学分析の昼夜連続運転が可能となり、効率化がはかられた。また、電動油圧式粉末試料成形機の購入によりブリケット法によってU,Th,Ta,Ce,La等の低濃度の元素分析が行えることから、現在、検量線の作成を行っているところである。稀土類元素分析は外注によった。平成6年度の研究課題であった1)中国地方中部の白亜紀・新生代火山岩類の主・微量元素組成やSr-Nd同位体組成の時代変化と日本海の拡大との関連の考察、2)新生代火山岩類中の地殻下部とマントル上部由来捕獲岩類の記載岩石学とEPMAによる造岩鉱物と部分融解ガラスの分析、3)外帯の中新世花崗岩類とそれらの捕獲岩類についての岩石学的研究については当初の計画どうりに進行しており、論文として投稿中または作成中である。 研究の結果、中国地方における白亜紀〜古第三紀花崗岩類のSr同位体比の広域的差異が明らかとなり、これは地殻下部の組成構造を反映しているものと考えられる。西南日本内帯には白亜紀の大量珪長質火成活動に先行して、高マグネシア安山岩の活動が存在することが幾つかの地域で確認され、それは大量珪長質マグマの成因にとって重要な役割を果たすことが予想される。白亜紀から新第三紀に至る火成活動の諸特徴の時代変遷も明らかになり、特に前期古第三紀から後期古第三紀にかけての組成の急激な変化は日本海の拡大に先行する上部マントルと下部地殻の組成的改変に起因し、日本海の拡大を準備したプレヒ-テイングに相当するという結論に達した。中国地方西部の地殻下部物質とそこにおける部分融解現象が記載され、第四紀火山が分布していない地域でも、一部では珪長質マグマが生成される条件下にあることが明らかになった。捕獲岩の岩石学的研究から外帯の四万十帯下部地殻の実体や、S-タイプ花崗岩には高マグネシア安山岩と泥質岩の部分融解相とのミキシングで生成されるものがあることが明らかとなった。
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