研究概要 |
平成7年度は補足的なデータの集積、蛍光X線分析装置を用いたブリケット法によるTh,U,La,Ta,Ce,S等の微量元素分析の確立、質量分析装置を用いたSr,Nd同位体組成分析のルーチン化をはかった。同時に3年間の研究成果をまとめることを追求した。その成果は以下の通りである。1)西南日本内帯、中国地方の白亜紀安山岩類は舞鶴帯もしくはその北縁に沿って分布し、また分布帯を境にして白亜紀〜前期古第三紀珪長質岩類のSr同位体初発生値も異なる。このことは珪長質岩類の発生場である下部地殻物質が組成的に異なる可能性を強く示唆している。またこの境界付近には高マグネシア安山岩や塩基性岩が存在することからマントルに達するようなテレーン境界である。2)西南日本内帯には白亜紀の大量珪長質火成活動に先行して、高マグネシア安山岩の活動が存在するが、それは大量珪長質マグマの成因にとって重要な役割を果たしている(すなわち塩基性マグマから熱と水の供給による下部地殻の融解による珪長質マグマの生成)。3)中国脊梁から山陰地方において白亜紀から新第三紀に至る火成活動の諸特徴の時代変遷が明らかになり、特に前期古第三紀から後期古第三紀にかけての塩基性と酸性マグマ組成の急激な変化は日本海の拡大に先行する上部マントルと下部地殻の組成的改変に起因する。4)第四紀玄武岩中の珪長質捕獲岩における部分融解現象が記載され、その結果、新生代流紋岩類の一部は圧力、水蒸気圧条件の異なる中・下部地殻の最低共融点における部分融解によって生成されたと推定される。5)捕獲岩の岩石学的研究から外帯の四万十帯下部地殻の実体や、S-タイプ花崗岩には高マグネシア安山岩と泥質岩の部分融解相とのミキシングで生成されるものがあることが明らかになった。
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