研究概要 |
(1)瀬戸内火山岩(香川県天霧山)中の変成岩ゼノリスについて詳細な検討を行った。ここではこれまで調べた地域とは異なり,黒雲母片麻岩,マイロナイト,三波川結晶片岩などとともに,グラニュライト相の塩基性岩,泥質岩レスタイト,が発見された。前者のグループのうち,泥質〜砂質岩源変成岩・花崗岩は火山岩マグマの熱によって部分溶融を受け,塩基性岩源変成岩は熱変成を蒙り,輝石が生じているのが一般的であるが,後者のグループはほとんど熱的影響を受けていない。このことは後者がより深部にあったことを意味する。反射波探査によれば香川県瀬戸内海付近では領家帯と三波川帯の境界は地下約15kmに想定されるので,前者のグループはこれより下部,後者はこれより上部(領家帯)を構成→レスタイトなどは領家帯には知られていない。関連する産出場所は肥後変成帯である。したがって,この地点では領家変成岩層の下部に,肥後変成帯の高度変成岩層に相当する岩石層が存在する可能性がある。グラニュライト相岩石について肥後および日高変成帯との比較検討を併せ行った(小松,田崎) (2)三波川結晶片岩中に瀬戸内期の火山作用に伴う熱流体による高温ホルンフェルスが存在することに注目し,新たに別子地域で調査を行い,別子鋼山の鉱内ボーリンブ試料の解析を併せ行った。この結果,熱的影響は従来考えられていた範囲より広く,部分的には地表にまで達していることが判明した(榊原)。 (3)深部起源岩石の温度履歴を解析するために,カンラン石一単斜輝石の元素分配に関する熱力学的定式化を行った(川嵜)。
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