研究概要 |
(1)野外調査 本年度はグリーンランドイスア地域にて野外調査を行い,1/5000地質図を作成し,約700個の試料を採取した。調査の結果,本地域はデュープレックス構造に特徴づけられる地質体であることが確認され,プリズム一個一個の同定がなされた。中央海嶺起源緑色岩,ホットスポット緑色岩,沈み込み帯緑色岩の区分が野外でなされた。野外地質学についての結果は,現在査読中である。また,西オーストラリアにも調査遠征して,約1ヶ月の調査を行いローボーン地域にて世界最古のオフィオライトの調査を行った結果,従来安定地塊中に貫入した層状貫入岩体とされてきた岩体がオフィオライトであることを実証した。その結果は,本年3月の合同学会にて講演の予定である。 (2)化学分析 現在までに調査を行って採取した岩石試料のうち,西オーストラリア地域の緑色岩約100個を,蛍光X線分析法にて全岩組成と幾つかの微量元素を,またICP-MSにて遷移金属元素を分析して,緑色岩の化学組成から太古代のマントル化学組成を推定した。太古代の海洋上部マントル現在のそれに比べて鉄に富み(Fo86),酸素のフュガシティーが高く,部分溶融の程度は大きい。中央海嶺玄武岩の起源マントルとホットスポット火山岩の起源マントル(深部マントル)との化学組成上の違いは,La/Sm,Zr/Ti,Zr/Y,K/Rb比が殆ど同じであることを考えて,殆どなかったことが推定される。35億年前のホットスポット火山岩から推定されるマントルのポテンシャル温度は約2000℃に近かったと推定される。
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