研究概要 |
本年度はピラバラ地域を集中的に調査して以下の成果を得た。35億年前の花崗岩-緑色岩地帯である、マ-ブルバ-、ノースポール、カ-メルリバー地域、同じく33億年前のロ-ボーン地域、26〜25億年前のハマ-スレ-(ビーズリ-リバー)地域の精査を行い、1:5,000の縮尺の地図を作成することができた。その結果、これら全ての地域においてデュープレックス構造の同定及び海岸プレート層序を確立することができた。その結果に基づき海洋プレート沈み込み方向も求めることができた。さらにこれらの太古代付加体に次々と貫入した花崗岩の岩体約20個から300個の岩石を採集した。 既に採集済みの緑色岩のうち付加体地質学から中央海嶺玄武岩とみなされた岩石群を蛍光X線分析装置によって主成分、微量成分を系統的に分析して以下の結論を得た(丸山・海老原)。(1)玄武岩は現在の中央海嶺玄武岩に比べて系統的に鉄成分に富む。(2)初生的な玄武岩マグマと平衡にあったマントルのかんらん石のMg値は85(現在は90)であった。(3)マントルのポテンシャル温度は1,400℃(現在は1,280℃)であった。(4)従って海洋地殻の厚さは18kmであった(現在は7km)。同様な方法で35億年前のカ-メルリバー地域のホットスポット火山岩を研究して次の結論を得た。(5)マントルのポテンシャル温度は、最近の高橋の相図(未発表)に基づくと2,100℃である(現在はアイスランドで1,480℃)(6)La/Sm,Nb/Zr,P/Zr比を現在の中央海嶺玄武岩と比較すると太古代中央海嶺玄武岩の場合と同様に太古代マントルが現在よりもずっとコンドライト的であったこと、及び35億年前には金属核の形成が完了していたことを示している。 これらのデータに基づいて代表的な中央海嶺玄武岩を出発物質にして太古代花崗岩がスラブの熔融で生じうるかどうか、また生じたメルトを二次イオン質量分析計を用いて微量成分を分析して固相残存鉱物との間での元素分配を決定して微量成分組成から、もっと詳細な物理化学的条件を検討する実験を開始した。
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