研究概要 |
研削加工における意志決定モデルを支援する知的データベースを自動的に作成する学習モデルを完成させることができた.学習モデルには,ジェネティックアルゴリズムを応用した.これにより,加工事例から研削の条件と結果の因果関係をファジィルールの形式で自動的に学習できるようにした.具体的には,ドレッシング条件と研削加工条件を入力とし,仕上面粗さと比研削エネルギ(研削焼けの発生を左右する)を出力とする関係を学習させた.これにより,要求される仕上面粗さを焼けなどのトラブルなしで達成する加工条件を提示する知的データベースが自動的に作成されるようになった.これは,熟練作業者の一連の知的活動を模擬するシステムである.その実用性を検証するために,計算機シミュレーションと実研削実験を行った. まず,計算機シミュレーションでは,学習データの数によってデータベースの質がどのように改善されていくかを検討した.シミュレーションを通して学習モデルのアルゴリズムにも改良を加えることができた. 本研究で購入することができたCNC円筒研削盤を使用し,実研削によってアルゴリズムの妥当性を検証した.要求される拘束条件としては仕上面粗さと比研削エネルギをとりあげ,設定すべき条件としてはドレッシング切り込み深さと送り,砥石切り込み深さ,工作物回転速度の4種類とした.学習データの数の影響等を検討し,本研究で提案したアルゴリズムは十分に実用に供しうることが確認された.ただし,今後検討を要する事項として,学習データがあまり多すぎると(本実験の場合は25個以上),加工条件推論の精度がかえって悪化するという現象が認められた.この点については更に計算機シミュレーションを通してその理由を明らかにする予定である.
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