研究概要 |
歯車装置の振動低減は,環境問題ばかりでなく省エネルギーを目的とした機械の低重量化のためにも重要な課題である。従来,歯車自体のみの振動に着目することで,低振動化の指針を得ていたが,僅か0.1μmにも満たない振幅の振動について,これ以上の低振動低騒音を実現するためには,軸や軸受,ハウジングなどを含めた振動系の正確な把握に基づいて,系をモデル化することが重要である。 そこで,自動車などで今日もっとも一般的に用いられているはすば歯車の振動挙動について, 1.まず,歯車本体に取り付けた加速度ピックアップによる計測では,従来単に振動の大きさだけしか計測できなかったのを,回転次数比解析を活用することによって,軸が軸直角方向にどのような運動(直線,楕円,円軌跡)をしているのかを推定できるように一般化できた。 2.つぎに,歯車軸および歯車の軸直角方向振動を,歯車箱中においても計測できるようにレーザドップラ振動計による振動計測手法を確立した。これによれば,はすば歯車の軸は従来から考えられていた,作用線方向にのみ振動するのではなく,これと直交する方向に振動していたり,軸が両端軸受の間でS字状に振動していたり,さらには軸が必ずしも振動の節として作用していないことなどが分かった。 3.一方,軸の弾性をも考慮に入れ,さらに歯車のかみあいを起振力とする振動を伝達マトリックス法によって解析することを試み,実験結果と,よく対応するようにパラメータの同定を行った。この結果,軸受のばねばかりでなく,軸受より外側の質量が軸の曲げの運動に作用して,系の振動に寄与していることが分かった。
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