研究概要 |
本年度は,研究テーマの基礎的な課題として、階層的な画像のセットからなる統一的な中間フォーマットを作成・符号化するためのサブバンド符号化方式を中心に研究を行った. 1.乗算なしフィルタバンクの設計と符号化特性の評価 サブバンド符号化においてはフィルタの畳み込み演算の計算量が多くなる欠点があるため,乗算なしで実行できる完全再構成フィルタバンクが提案されているが,これは直線位相性を満たしていないために復号画像が劣化する.そこで,このフィルタバンクをモジュールとし,それを複数組み合わせて2チャネルのフィルタバンクとする方式を提案した.具体的に10タップのフィルタからなるフィルタバンクを設計し,さらに,実画像を用いたシミュレーションにより従来のフィルタよりも良好な符号化特性をもつことを示した. 2.任意の有理数倍の画像縮小方式 サブバンド符号化方式においては,低周波帯域の信号を取り出すことにより縮小画像が得られる.このときに,サンプリング比が有理数であるフィルタバンクを用いれば,有理数倍の縮小画像を得ることができる.この方式による縮小画像の画質を向上させることを検討し,リンギングの抑制と計算量の削減を目的としてタップ長が短いフィルタを用いる方式を提案した.さらに,一例として2/3倍の縮小を行うためのフィルタバンクを設計し,それを用いて実画像に対するシミュレーションを行ったところ,従来方式と比較して低ビットレートにおける圧縮効率が優れていることが示された. また,上記の他に,直交変換を用いた画像の解像度変換方式,および,階層的画像構造からの画像の認識手順などに関する検討を行った.
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