超音速輸送機(Supersonic Transport:SST)のための課題として、(1)ソニックブームの低減化、(2)オゾン層の保護、(3)空港騒音の低減化を検討している。 (1)ソニックブーム低減化に関する研究 航空機翼平面形をデルタ翼(基本形)及び矢形翼とし、機首を尖頭及び鈍頭とした場合の機体近傍場の圧力分布をマッハ数2の超音速風洞実験によって測定し、デルタ翼よりもアロ-翼の方が、また、尖頭よりも鈍頭機首の方がそのピークを減少させ、ひいてはソニックブームを低減化するのに有効であることを示した。これらの形状についてオイラー方程式による数値シミュレーションで近傍場の圧力分布を得るとともに、これらを初期条件として遠方場のソニックブーム強度を計算し、上記形状の効果を評価した。このことから、ソニックブーム低減化を実現する形状提案の可能性を示した。 (2)オゾン層化学に関する研究 (1)高層大気を模擬したスペースチャンバ内にオゾンと窒素化合物を投入し、その反応で生じた成分を測定することにより、当該反応の特性を知る実験を開始した。これによって、オゾン/窒素化合物反応によるオゾン減少量の推定を行う。 (2)高度方向のみを考えた一次元モデルを用い、流体力学方程式を解いて地球大気中窒素化合物の拡散過程を計算した。これによって、成層圏に注入された窒素化合物の拡散によって生じる濃度分布を知ることができる。 (3)空港騒音に関する研究 騒音評価に関する基礎調査及びエンジンの騒音低減化の動向を調査している。
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