本年度は、主として三重県の安濃ダムと滋賀県の永源寺ダムを対象として洪水によるダム貯水池への濁水流入とその後の清澄過程、流域の変貌などについて検討した。 前半は、安濃ダム流域を対象に、1993年9月9日の14号台風の後遺症を調査した。14号台風によってもたらされた洪水は、最大流入量が計画洪水量を越える200年確率の大洪水であったため、流域への爪痕は深く、その後の小洪水で流入する濁水の濃度は、大洪水以前の同規模の小洪水に較べ、10倍程度も濁ることが分かった。一方、小洪水時には流入流量と濁度の関係が不明瞭になった。即ち、通常流量が大では濁度も大であるが、必ずしも、そのよにはならないのである。現在、その原因を検討中である。 後半は、1994年9月30日の26号台風の影響を調査した。26号台風は大型台風で、広範囲にわたって豪雨と強風をもたらした。安濃ダムと永源寺ダムは鈴鹿山脈の東側と西側に位置する同規模のダム貯水池で、同時に、同規模の影響を26号台風から受けた。両ダム貯水池共に洪水流入直後、濁度が200ppm程度にまで上昇した。その後、両ダム貯水池の清澄過程を追跡した結果、永源寺ダムでは洪水流入後1ヶ月程で湖水は殆ど回復したが、安濃ダムでは回復の程度は芳しくなかった。調査の結果、濁水流入後の貯水池運用の方法と、貯水池の回転率の違いがその差となったことが判明した。現在、模型によって貯水池内の濁水の清澄過程を実証するための実験を実施している。
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