蒸発に伴う土壌中の水分・塩分・熱の連成輸送のメカニズムを、鳥取砂丘砂を用い、恒温恒湿室での精密な実験による結果をもとに検討した。その結果、土壌溶液の塩濃度が蒸発速度の形態に大きな影響を与えていることが明らかになった。 土壌水が純水の場合、表層で蒸発が生起している恒率乾燥、蒸発面が土壌内部に移行する際の減率乾燥、その後の土壌内部からの恒率乾燥と蒸発形態は変化した。このように、蒸発が生起している位置によって、蒸発形態は規程されている。これより、土壌間隙内での蒸発および水蒸気体による移動量は土壌表面からの蒸発に比べて非常に小さいことが明らかになった。 一方、土壌水が塩溶液の場合、実験開始時より蒸発速度は徐々に低下し、恒率乾燥は発現せず、蒸発形態は減率乾燥のみであった。土壌水中に塩が存在すると土壌水のポテンシャルは低下する。そして、蒸発の進行により、塩濃度は徐々に上昇し、ポテンシャルも低下する。このため、恒率乾燥になることはなく、蒸発速度が常に減少した。 また、表層温度と蒸発速度には高い相関が見られた。これは蒸発による気化熱の影響であり、土壌水が純水の場合には、減率乾燥期に表層温度の急激な上昇がみられたが、塩溶液の場合には、表層温度は蒸発速度と逆に徐々に上昇した。 このように水分・塩分・熱は相互に影響しながら移動しており、本質的に連成輸送である蒸発現象を把握するためには、ここの移動のみを考えるのではなく、相互の影響を考慮する必要があることを実証した。
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