研究概要 |
本研究は,磁場に沿った移動より高温の電子と低温の電子が交換する熱輸送過程を解明し制御することを目的とする。具体的には,低温電子を加熱しミラー効果を強めて押しもどすサーマルダイクの概念をタンデムミラー装置ガンマ10の開放端磁場配位に適用する。平成5年度は,電子加熱のためのマイクロ波発生装置(2.45GHz,5kW)と伝送系(収束型ホグホーンアンテナ),エンドプレート制御系及び計測系(プローブ系,熱負荷観測系)など実験の基本要素の設計・製作とガンマ10装置への組込みを計画通り完了した。その設計に必要な理論検討を行い新しい結果を得たので研究発表を行った。 これまでに得られた成果は次の通りである。本実験の条件下で大振幅の単色波による電子加熱を数値的に解析し,電子の速度分布が従来の拡散モデルとは異なった形状となることを見出し,かつその形状を特徴づけるパラメタの比例則を得た。(Phys.Plasmas,Vol.6,No.4,1994.)この結果を用いて低温電子が加熱後ミラー反射を受ける確率の評価を行い,実験に必要なマイクロ波の電界強度を導出した。そして,それを満たすのに必要とされるマイクロ波源の仕様とアンテナの構造を決定し,設計に反映させた。(IAEA TCM 1993.)また我々の開発した理論モデルを拡張して,加熱の結果生じる電位分布の変化を評価し,計画当初の考え方の正しさを確認した。(J.Phys.Soc.Jpn.Vol.63,No.2,1994.) 本実験に関連して,エンドプレート前面に金属メッシュを取付け,負バイアス電位を印加し二次電子を静電的に反射する予備実験を行った。この結果,高温電子の流出減少に対応すると解釈される,エンドプレート電位の深化が観測され,また高温電子の温度が増加する兆候が見られた。これはサーマルダイクの効果として期待される現象と等価であり,本研究計画のシナリオを支持するものである。
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