本研究では地球進化を解明するための手段として、微小試料を用いて年代及び希ガス同位体比を測定する方法を確立し、それらの応用を行うことを目標とした。そのために、岩石や鉱物からのガス抽出のためにアルゴンレーザーを用いることにより、数mg以下の試料から分析に必要なガス抽出を行えるシステムを開発した。本研究で対象とする試料からの脱ガス量がきわめて少ないので、システムそのものからのバックグラウンドを最小限にするために、用いる真空計やガスの精製部分について脱ガスの少ない材質を使用すると共に、システム全体の容量が可能な限り小さくなるようにした。抵抗加熱炉を用いた段階加熱に相当する脱ガス法をアルゴンレーザーによって行うための基礎実験を繰り返した。中性子照射を行った雲母鉱物粒などに対して、レーザーの出力を調整することにより段階加熱に相当する脱ガス法を行うことができ、それを利用してアルゴン-アルゴン法によるプラトー年代を求めることが出来た。5億年程度の年代においてはこれまでの方法によって得られたアルゴン-アルゴン年代に比較しても十分な精度を得られているので、それより古い年代の試料に対しては実用上十分に本方法が適用出来る見通しが立った。しかし1000万年より若い年代の試料に対してはその精度の点で問題が残っている。またレーザー加熱により、約20億年前にカナダに噴出したコマチアイトから希ガス抽出を行い、その希ガス組成を同様の方法で得た現在の玄武岩中の希ガス組成と比較した。その結果、放射性起源のヘリウム、アルゴン以外の希ガスに関しては、コマイチアイトの方が玄武岩よりもクリプトンやキセノンの含有量が多いように見える。その原因の解明は、本研究ではまだ限られた岩石試料しか扱っていないので、さらに広範囲の試料についてのデータを得て地球進化との関連についての詳細な検討を必要とする。
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