研究概要 |
本研究は,ビラジカル活性種の電子状態を高次制御することによって,新規でかつ実用的にも有用な[3+2]型付加環化反応を実現することを目的としておこなった.すなわち,これまで反応性の制御が極めて困難とされてきたトリメチレンメタン(TMM)およびビニルカルベン(VC)活性種の電子状態を制御し,全く新しい双極性一重項3炭素4π電子反応剤を作り出し,これをオレフィンなどの2π系受容体と反応させることで五員環化合物の新規合成法を開拓した.本年度は研究の最終年度であり,反応活性種の合成的応用範囲の確定を念頭に研究を行なった.有機合成面での検討課題として金属触媒存在下での不斉付加反応について検討し,アルカロイドを含む5員環天然有機化合物の合成を目的として炭素-ヘテロ原子二重結合への付加反応についても検討を加え,シクロペンタンおよびピロリジン環の新規合成法を開発できた.フレーレン分野の研究でのこれまでの研究での特筆すべき発見は,TMMやVCの付加環化反応が放射性ラベル体を含むフラーレンの新規合成法を提供することを見いだしたことである.本年度はさらにC_<70>フラーレンの化学修飾の可能性を検討した結果,水溶性C_<70>0誘導体の合成に成功した.
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