研究概要 |
本年度は、前年度に得られた溶液中における前駆体分子の配位構造の制御因子および酸化物基板上におけるエピタキシャル膜の合成因子に基づいて、物性測定のためのエピタキシャル膜の合成因子や配向制御因子の検討を行った。 K(Ta,Nb)O_3薄膜を種々の条件下で金属/酸化物複合基板上において合成し、複合基板上におけるエピタキシャル膜の合成のための制御因子を明らかにした。すなわち、前駆体の結晶化挙動を差動型示差熱天秤により解析することにより複合基板上にK(Ta,Nb)O_3薄膜を合成し、X線極点図形の測定により、エピタキシャル膜が結晶化していることを明らかにした。これにより、初めて、金属/酸化物複合基板上のエピタキシャル膜の合成に成功した。また、(Pb,Ba)Nb_2O_6膜合成における前駆体分子の生成過程も同様の手法を用いて検討した。その結果、前駆体分子の溶液中の構造や配位子の状態を明らかにすることができた。この前駆体溶液を用いて、酸化物基板上において(Pb,Ba)Nb_2O_6配向膜の合成に成功した。これは従来合成が困難とされていた物質であり、金属-有機化合物の反応制御による前駆体の分子設計が非常に重要であることを示すものである。現在、この基本的な考え方を展開し、BaB_2O_4などの機能性膜合成用の前駆体の設計を進めている。 また、K(Ta,Nb)O_3エピタキシャル膜の物性と分子の反応制御との関係を評価装置で検討した。KTNエピタキシャル膜のヒステリシスなどの性質が、反応制御により得られた前駆体の構造、組成により制御可能であることを見いだしている。これらの配向膜の複合基板上における結晶化過程について検討を行っている。
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