研究概要 |
アモルファスシリコン生成機構やシリコンナノクラスター生成の過程で重要なジシレンやシリルシリレン等のラジカルは、その存在が量子化学計算では予測されているが、実験的には検出されていない。本研究ではこれらのラジカルを検出することを目的としてレーザ多光子イオン化法を用いた飛行時間型質量分析計を開発した。昨年度までに開発した装置の分解能と感度を向上させるため、ドリフトチューブを長くし、さらに2段収束電極中にアインゼル型のイオンレンズを挿入した。この改良された装置を用い、主としてSi_2H_nラジカルの検出を試みた。反応管中にHe希釈された塩素ガスを流し、これにマイクロ波放電を行って塩素原子を生成し、シランまたはジシランを混合して水素引き抜き反応をおこさせて各種のSi-H系のラジカルを生成した。シランを用いた場合、Si,SiH,SiH_2の信号を観測でき、これらの信号のイオン化光源(レーザ)の波長依存を測定したが、その結果シリル以外は波長依存がなく非共鳴イオン化による信号である事が分かった。SiHイオン生成経路についてはシリルラジカルイオンの解離によるものと推定した。ジシランを用いた場合には、Si_2,Si_2H_3等のイオン信号が観測されたが、いずれも非共鳴イオン化による信号であることが確認された。SiClの強い信号も観測されたが、この起源については不明である。
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