30%重酢酸/70%軽水中でボンビキシンのDQF-COSY、HOHAHAの各NMRスペクトルを測定し、各スペクトルを完全に帰属することができた。さらに、NOESYスペクトルからヘリックス構造等の2次構造を明らかにするとともに、得られたNOE情報をもとにディスタンスジオメトリーによる計算からボンビキシンの立体構造を明らかにすることに成功した。立体構造上の特徴はA鎖の部分についてはインスリンとよく一致していたが、B鎖のC末端部分でβターン構造がないことからむしろリラキシンに近い構造をしていることが明かとなった。今後、ボンビキシンとインスリンのハイブリッド分子の合成、その立体構造の解析および生物活性の測定を行い、活性の特異性と立体構造の関係を明らかにする予定である。 大腸菌で発現したPTTHについて予備的にNMR測定を行なったところ、N末端およびC末端部分はかなり揺らいでいるものの中央部分はしっかりとした立体構造をとっていることおよびβシート構造に富むことが明かとなった。さらに、NMRのシグナルを完全に帰属するためにラベル化を試みたが、生産量が少なく、必要量の試料を得るためには1千万円程度の試薬が必要となるため現在、発現ベクターおよび培地の改良を行なっている。また、ペプチド鎖間のジスルフィド結合のみが切断されたモノマー型PTTHがダイマー型PTTHの約半分の活性を有することが明らかになった。現在、ペプチド鎖間のジスルフィド結合を形成するシステイン残基を他のアミノ酸に変えた変異型PTTHの発現を試みている。
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