ボンビキシン-IIの受容体認識部位の立体構造上の特徴を明らかにするために、ボンビキシン-IIの場合と同様に立体構造を決定し、ボンビキシン活性を有する分子と有しない分子の構造を比較した。その結果、活性のある分子に特徴的なB鎖中央部の8残基(TyrB6、ArgB9、AlaB12、ArgB13、ThrB14、AlaB16、AspB17、LeuB18)のうち、ThrB14、LeuB18を除く6残基が分子表面に露出して特徴的なパッチを形成しており、これらが直接ボンビキシン受容体と結合することが示唆された。不活性の分子ではこのパッチを構成する残基が構造的にも化学的にも異なったものに置換されており、そのためにボンビキシン受容体に結合できないと考えられる。また、ボンビキシシン類縁体の構造活性相関からA鎖N末端(GlyAl、ValA3)、A鎖C末端(CysA20-CysB19間のジスルフィド結合)もボンビキシン-IIの受容体結合に関与していることが示唆された。これらはB鎖中央部のボンビキシン受容体認識パッチに隣接して分子表面に存在するため、結局、ボンビキシンの受容体認識面は、A鎖N末端とC末端およびB鎖中央部から構成される面であると特定した。現在この面内の各残基側鎖の受容体結合における重要性についてさらに詳細な解析を行っている。 また、前胸腺刺激ホルモンの立体構造の解析については結晶化の条件を検討している段階にとどまっている。しかし、コンピューターを用いたモデリングから2つのβシートを持ち、シスチンノットスーパーファミリーと同様の立体構造を有していることが示された。この結果は、これまでにNMRを用いた予備的な解析で得られた結果とよく一致する。
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