研究概要 |
A)光学活性医薬品類の酵素触媒不斉合成法の検討. トコフェロールは、強い抗酸化活性を有するため、発癌や老化に関わっているとされているスーパーオキシド類のスカベンジャーとして注目されている。今回、酵素の不斉空間の応用として光学活性トコフェロール誘導体の鍵中間体であるクロマンエタノールの不斉合成を検討した。種々検討した結果、基質としてオキザレートエステルを用いることにより、リパーゼ触媒による分子内不斉マイケル反応が進行し光学活性クロマンエタナ-ル(38%ee)を得ることが出来た。光学純度および絶対配置の決定は、LiAlH_4により還元してクロマンエタノールとした後、光学異性体分離カラムを用いたHPLC分析により比較決定した。 B)1,4-ジヒドロピリジンジメチルエステルの不斉加水分解に適した抗体酵素の開発と応用. 従来のリパーゼ酵素触媒では行進しなかった1,4-ジヒドロピリジンジメチルエステル(1)の不斉加水分解反応を解決するために、遷移状態アナログとしてデザインしたリン酸エステルのハプテン(2)の合成を検討した。ハプテンの作製に先立ち、出発原料となる光学活性なPROMエステル体(3)の酵素法による大量合成法を確立した。さらに3から数工程でハプテン(2)の合成に成功した。さらに平行してグリセロール誘導体の遷移状態モデルのハプテンのデザインおよび合成を行った。そして単クローン抗体の作製に成功したことから、1,4-ジヒドロピリジンジメチルエステル(1)の抗体酵素の作製のための基礎技術を確立した。 C)リパーゼの一次構造のプロテインエンジニアリングで新しい酵素の開発と応用. 一次構造の解明されたリパーゼを、遺伝子工学的手法により非特異的あるいは部位特異的に変異を加えることにより、酵素を改変し新しい有用な酵素の開発の検討を行った。まずリパーゼ活性と薬剤耐性(CM)を合わせ持つPseudomonas mephytica(pHTLipl)から沸騰法によりプラスミドを調製し、CaCl_2法によりEscherichia Coli(DH5)の形質転換体を得た。さらに形質転換株からCsCl密度勾配法によりプラスミドの大量調製を行った。さらにこのプラスミドを電気融合法によりPseudomonas mephytica(1ip)に導入して培地上で薬剤耐性株の分離に成功した。今後、今回確立した方法を基にプラスミドに対して亜硝酸処理等の変異を加えることにより、変異株の調製を行い新しい機能を持った酵素の創製を検討する。
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