サリドマイドの薬害を契機に、光学活性医薬品の効率的合成法の確立が求められて来た。しかし、多くの新規有機合成反応や不斉合成反応研究の成果が報告されて来たが、この緊急課題は解決されず、現在でも不斉炭素原子を持つ合成医薬品は殆どラセミ体として開発されている。1990年に日本で開発中の合成医薬品の代表的な不斉骨格はジヒドロピリジン誘導体、グリセリン誘導体及びアミノアルコール体で、この3種類で等ラセミ体医薬品の過半数を占めている。最初に、これら光学活性医薬品の金属触媒不斉合成を検討した。光学活性アミノアルコール系医薬品の効率的不斉合成法は独自に開発した金属触媒配位子を用いて確立出来たが、光学活性ジヒドロピリジン系医薬品、及びグリセリン系医薬品には金属触媒不斉合成法は不適であった。そこで、リパーゼ触媒不斉合成を検討した。我々は基質の溶解性を重視し、“有機溶媒中での酵素触媒不斉合成"を検討した。我々独自の新コンセプトに基ずき、Vinvl Acetate Methodology、Meso-Racemic Diol Methodology、Succinic Anhydride Methodology、Acyloxymethy Methodology、Carbamoylmethyl Methodology、Point Mutation Methodology、Oxalate Methodology、Intramolecular Asymmetric Cyclization Methodology及びRemote Recognition Methodology等の新合成方法論を展開し、各種光学活性ジヒドロピリジン、グリセリン誘導体、バルビツレートやトコフェロール等の効率的合成に成功した。これらの方法論は各種光学活性医薬品等の合成に利用出来る。
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