研究概要 |
主要組織適合抗原系(Major Histocompatibility Complex;MHC、ヒトではHLA)は、身体を構成する全細胞の細胞膜上に発現している糖タンパクである。免疫担当細胞が自己と非自己を識別する際,自己マーカーの役割をはたしている。一方,哺乳類のMHCは数種の相同分子からなり、複数の遺伝子座がある。しかも各々の遺伝子座あたり30個以上もの遺伝的多型を示し、他の遺伝子には見られない極めて特異な遺伝子ファミリーを構成している。この多型成立機構を分子進化的に理解することが、この課題の目的である。 平成5年度において純系メダカのMHC遺伝子構造決定がクラスIIのベータ鎖において完了した。本年度はこれに対応するアルファ鎖の構造決定と、それらのゲノムでの構成を明かにする。さらにMHCクラスI遺伝子の解析が待たれるが、これは偽遺伝子の発現があるためcDNAが分離できにくく予定より進行が遅れており、さらに集中的に解析する必要がある。メダカMHC遺伝子の構造決定後、その超可変領域について集中的に解析をすすめる。次に地域変異株を利用し、多型を示すであろう多数のMHC型で、分子内超可変領域をPCR法により決定し、その塩基置換の様相を解析する。 これと平行してメダカへの遺伝子導入系を開発している。目的の遺伝子を受精卵に注入する際の適当なマーカー遺伝子の系として黒色色素メラニンを形成する遺伝子であるチロシナーゼを分離し、これをアルビノ・メダカの系を利用することにより遺伝子注入検定系を確立する。平成5年度にこのチロシナーゼ遺伝子の構造決定が順調に進行したので、平成6年度は分離したチロシナーゼ遺伝子をメダカ卵に注入する。
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