本研究においては以下3点についての研究を行った。 1)ミオシンの精製とその解析:テッポウユリ花粉管からミオシンを精製することに成功した。重鎖の分子量は17万であった。植物からアクチンフィラメントとの滑り活性をもったミオシンを精製することに成功したのはこれが初めてである。また、このミオシンのATPase活性およびアクチンフィラメントとの滑り活性はカルシウムによって阻害された。植物細胞でみられる原形質流動は一般的にカルシウムによって阻害されることが知られているが、本研究はその分子的基盤を明らかにしたものといえる。現在、そのメカニズムについての解析を行っている。また、重鎖に対する抗体を作製することにも成功した。これを用いて、ミオシンの細胞内における局在についての解析も行った。 2)トチカガミ根毛の逆噴水型流動の解析:トチカガミの根毛ではいわゆる逆噴水型流動が見られる。アクチンの阻害剤を用いた研究によって液胞貫通原形質糸の構造および原形質流動の維持にはアクチンフィラメントが中心的な役割を果たしていることを明らかにした。また、細胞内におけるアクチンフィラメントの構造維持には微小管が関与していることも明らかにした。 3)アクチン調節タンパク質の精製:細胞内におけるアクチンフィラメントの構造発現にはアクチン調節タンパク質が重要な役割を果たしていることが考えられる。しかしながら、植物においては、この研究はほとんど進んでいない。本研究においてテッポウユリ花粉管からアクチンフィラメントを束化するタンパク質を精製し、その特性を明らかにした。植物からこのようなアクチン調節タンパク質を精製することに成功したのはこれが初めてである。
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