研究概要 |
高等植物ミトコンドリアゲノムはサイズが大きく、複数の環状DNAから構成されているなど構造が複雑である。そのためゲノムの分子構造と機能の関係を解明するためイネ(O.sativa cv.Nipponbare)のミトコンドリアゲノムの転写制御について調べた。 トウモロコシなどのミトコンドリアDNA上では、rps3-rpl16とnad3-rps12がお互い離れた領域に存在し、それぞれの転写単位を持っている。イネでは4遺伝子が、ミトコンドリアDNA上の約7kbの範囲内にrps3-rpl16-nad3-rps12の順序で存在していた。ゲノム構造の変化が機能に与える影響を調べるためこれらの遺伝子の転写様式を明らかにした。ノーザン解析を行ったところ4遺伝子に特異的なプローブを用いた場合、共通する約6.6kbのシグナルが検出された。さらに、それぞれrpl16とnad3のコード領域に特異的なプライマーを作製しRT-PCRを行ったところ、予想される断片が増幅され、rpl16とnad3の間のスペーサー領域も転写されていた。これらの結果より、rps3-rpl16-nad3-rps12の4遺伝子は共転写されていることが明らかとなった。 次にこの転写単位の転写開始点を、in vitroキャッピング法とRNaseプロテクション法で調べた。その結果、rps3の上流域およびrpl16-nad3間の少なくとも2カ所に転写開始点が存在した。rps3の上流域の転写開始点をプライマー伸長法で調べたところ、rps3の翻訳開始コドンの320塩基上流に転写開始点が存在した。この転写開始点付近に、トウモロコシやコムギで提唱されているプロモーターの配列と類似した配列が見いだされた。なお、他の転写開始点はnad3の翻訳開始点から422/423塩基上流にあることが示された。すでに示した2種類の遺伝子に加え、5種類のイネミトコンドリア遺伝子(atpA,atp9,rrn26,rrn18,trnfM)の転写開始点を、上述の手法で決定したところCRTAが転写開始に重要であることが明らかになった。
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