研究概要 |
作物の根は養水分吸収,植物ホルモンを含むいろいろな化合物の形成,環境に対する応答など個体の生育に重要な役割を果たしている.本研究は根群の発達とこれらの役割に着目して研究を行い,以下の成果を得た. 1.ダイズでは根群が土壌中に深く発達している品種が耐乾性が強い.外海に面した海岸に生育するマングローブは陸から海に直接流出する地下水を根が吸収することによって膨圧を高く維持していることが推察された. 2.根の水分屈性は水ポテンシャルの違いが根端で感知されて起こる.バ-ミキュライト中では0.02MPa/mm程度の小さい水ポテンシャル勾配にも根は反応して水分屈性を示した. 3.根群が良く発達した作物,根の生理的活性の高い作物は根の吸収能力が高く,光合成速度の日中低下の程度が小さい.さらに,これらの作物は老化に伴う光合成速度の低下程度も小さい. 4.わが国の夏の畑作物は栄養生長期を梅雨期の湿潤条件で生育することによって地上部は大きく繁茂するが,根群の発達が劣る.このことによってその後の比較的乾燥する夏には,土壌の表層の水分が減少しただけでも作物は干ばつ害を受け,潅漑しても潅漑した水の利用効率が低くなる. 5.日本晴などに比較して登熟期に出液量が多く,葉の老化が遅い水稲品種アケノホシは,根から地上部に送られるサイトカイニン,特に結合型ゼアチンの量が多い.
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