宿主特異的毒素が介在するアルターナリア病原菌の病原性分化と進化の分子基盤

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05404010
• 研究機関: 鳥取大学
• 研究代表者: 甲元 啓介 鳥取大学, 農学部, 教授 (80032093)
• 研究分担者: 小林 裕和 静岡県立大学, 大学院・生活健康科学研究科, 助教授 (80170348) ; 児玉 基一朗 鳥取大学, 農学部, 講師 (00183343) ; 浜崎 敞 鳥取大学, 農学部, 教授 (40032081) ; 尾谷 浩 鳥取大学, 大学院・連合農学研究科, 教授 (50032305)
• キーワード: host-specific toxin / Alternaria toxins / Alternaria alternata / host specificity / gene tagging by REMI

研究概要

1)タンジェリンbrown spot病菌のオースラリア産菌株が既報のACT毒素Ib(先に我々が米国産菌株から単離、構造決定したもの)に加えて、新規な毒素を生成することをHPLC分析と選択毒性の生物検定で確認し、それを単離してACT毒素IIIbと命名した。機器分析で構造解析した結果、それはACT毒素Ibのロイシンがイソロイシンに置換されたものである。また近年イスラエルのカンキツ栽培地帯でその発生が報告され、分離されたタンジェリンbrown spot病菌もHPLC分析でACT毒素Ibを生成していると考えられた。
2)イタリア・ボロ-ニア近郊のイチゴ栽培地帯で特定の品種"セセナ"などに壊滅的被害を起こした病原菌は、日本産イチゴ黒斑病菌が生成するAF毒素Iを生成する。
3)REMI法による遺伝子タギングを行い、トマトアルターナリア茎枯病菌、ナシ黒斑病菌の毒素非生産変異体の作出とその解析を行なった。ゲノムDNA中1ヶ所に1コピーの組込みが起こりその組込みが単純であること、少なくとも7本の染色体に組込みが示され、組込みは見かけ上ランダムに起こっていたので遺伝子単離に有用である。
4)リンゴ斑点落葉病菌の環状デプシペプチド構造を持つ宿主特異的AM毒素はペプチド合成多機能酵素複合体(CPS)によって生合成されると考えられ、構造類似のHC毒素生合成遺伝子(HTS1)のアミノ酸活性化ドメイン塩基配列を利用したPCR法により、AM毒素生合成遺伝子のクローニングを試みた。プライマー_<78>79によってリンゴ斑点落葉病菌M-71株から得られたPCR産物(71-310)は、塩基配列およびアミノ酸配列の相同性、ペプチドの構造上の類似性、ゲノム中での存在様式、病原菌特異的発現などから、AM毒素生合成に関与するCPSに接近できたものと考えられる。

研究成果

• [文献書誌] 尾谷 浩・甲元啓介: "病原菌の宿主識別における宿主特異的毒素の役割" 日本農芸化学会誌. 69. 178-181 (1995)
• [文献書誌] Tanabe,K.,et al.: "Characterization of the mutants of Alternaria alternata Japanese pear pathotype deficient in melanin production and their pathogenicity." Ann.Phytopathol.Soc.Japn. 61. 27-33 (1995)
• [文献書誌] Kodama,M.,et al.: "A rapid and sensitive procedure for the quantitative detection of AL-toxin by fluorescence derivatization and separation by high performance liquid chromatography." Ann.Phytopathol.Soc.Japn. 61. 477-480 (1995)
• [文献書誌] Otani,H.,et al.: "Alternaria toxins and their effects on host plants." Can.J.Bot.73(Suppl.1). S453-S458 (1995)
• [文献書誌] Wada,H.,et al.: "Occurrence of the strawberry pathotype of Alternaria alternata in Italy" Plant Disease. 80(in press). (1996)
• [文献書誌] Huang,S.-L.,et al.: "Hyphal anastomosis and complementary growth of fused cells in Alternaria alternata" Mycoscience. 37(in press). (1996)
• [文献書誌] Kohmoto,K.,Singh,U.S,and Singh, R.P. (eds.): "Pathogenesis and Host Specificity in plant Diseases" Pergamon Press,Oxford, 1145 (1995)
• [文献書誌] H.Kunoh and D.Mills,Eds.: "Molecular Aspects of Pathogenicity and Host Resistance : Requirements for Signal Transduction" APS Press,St.Paul (in press), (1996)