研究概要 |
これまでの研究から,地方病性牛白血病(EBL)に出現する腫瘍関連抗原(TAA)は13種類の単クローン性抗体(MoAb)を用いることにより3型に分けられた:即ちGroup1共通抗原,Group2部分的共通抗原,Group3個体特異的抗原である.Group1のMoAbが認識するエピトープは牛B細胞リンパ腫細胞から調整した可溶性TAAと未処置生存同一細胞の両者に保存されていた.一方,Group2の7種中2種のMoAbは可溶性抗原と生きた細胞の両者と結合したが,1種のMoAbは可溶性抗体とは結合したが,生存細胞とは結合しなかった.Group3は両者とも結合しなかった. 次に、Group1の抗体のうちc143抗体によって認識される腫瘍関連抗原を持った細胞のphenotypeとontogenyをフローサイトメーターおよび免疫組織化学により解析した.c143抗体によって認められる腫瘍関連抗原は牛白血病ウイルス(BLV)非感染正常牛の主にB細胞,大食細胞,細網細胞およびCD4陽性T細胞の一部に認められた.in vitroで正常牛の末梢血単核細胞が活性化された場合は,CD8陽性T細胞およびnon-T/non-B細胞にも発現した.さらにc143抗原を発現しているB細胞も,形質細胞の段階では消失していた.BLV非感染正常牛の血流中のc143陽性細胞はheterologous subpopulationを作り,これらの細胞は他の表面マーカー,即ちCD2,CD5,CD6およびB細胞特異分子B1およびB2も伴って発現していた.BLV感染牛では,c143抗原を発現した細胞の数はEBLの進行に伴って増加した.さらにリンパ肉腫をつくっていないBLV感染牛ではc143抗原陽性で,sIgM,CD5,B1,B2を共に発現しているが,CD2,CD5,CD6は発現していない細胞が増加していた.さらに全EBL牛の腫瘍からのc143陽性細胞の大部分は1個のB細胞から由来し,2つのtypeに分けられた.即ちc143^+,CD5^+,B1^+,B2^+でsIgM^+または^-である. 以上今回の結果から,c143抗原はEBL診断の有用なマーカーであるばかりでなく,リンパ様細胞の分化のマーカーであることが証明された.
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