研究課題/領域番号 |
05404021
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
西塚 泰美 神戸大学, 医学部, 教授 (10025546)
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研究分担者 |
荻田 浩司 神戸大学, 医学部, 助手 (60204103)
浅岡 良則 神戸大学, バイオシグナル研究センター, 助教授 (20222565)
中村 俊一 神戸大学, 医学部, 助教授 (40155833)
吉川 潮 神戸大学, バイオシグナル研究センター, 教授 (40150354)
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キーワード | 細胞内情報伝達機構 / プロテインキナーゼC / ホスホリパーゼA_2 / ホスホリパーゼD / ジグリセリド |
研究概要 |
イノシトールリン脂質の加水分解反応が、細胞の情報伝達に果している役割は、すでに確立されているが、細胞膜では同時にコリンリン脂質(PC)も分解され、細胞情報の伝達に関与する可能性を検討した。その結果、ホスホリパーゼA_2(PLA_2)によって切り出される不飽和脂肪酸とリゾコリンリン脂質(リゾPC)の両者が共に、ジグリセリド(DAG)と協調してプロテイン・キナーゼC(PKC)の活性を促進させ、細胞応答を増強させることが判明した。そこで種々の不飽和脂肪酸を切り出すPLA_2について、またレセプターとの共役機序について解析した結果、この種のPLA_2の活性調節にはチロジンのリン酸化反応、PKCによるセリン・トレオニンのリン酸化反応がともに関与していることが示唆された。この際、GTP-γ-Sの作用も受けるため、G-蛋白質と共役した受容体からの調節の可能性も示唆される。 次に、ホスホリパーゼD(PLD)もまた、単一のシグナル、ことに増殖因子の刺激によって活性を発揮し、PCよりDAGを供給するが、その機構の解明が必要である。DAGの持続的な供給がPKCの活性維持に必要であり、細胞の分化や増殖に関与する故である。今回、PLDを動物組織より抽出解析したところ、この酵素はPLA_2と異なりGTP-γ-Sを必須として要求し、この他にPKC及び、チロジンキナーゼによるリン酸化反応がいずれもこの酵素の活性調節に関与していることを示唆する結果を得た。PLDは細胞膜、ないし細胞骨格に強く結合していて、この他に細胞質の可溶性因子が必要である。従ってPLDは、細胞内情報伝達網の中に組み込まれていると想像される。以上のように、細胞膜に与えられた単一のシグナルは、細胞膜の種々のリン脂質の分解カスケードをひきおこし、その代謝生成物のいずれもが、PKCを介する情報伝達網に関与している可能性が生まれてきた。
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