救急医療をめぐる臨床法医中毒学的緊急薬毒物スクリーニング

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 05404027
• 研究機関: 金沢大学
• 研究代表者: 市村 藤雄 金沢大学, 医学部・附属病院, 教授 (40143911)
• 研究分担者: 高安 達典 金沢大学, 医学部, 助教授 (80154912) ; 吉田 豊 金沢大学, 医学部附属病院, 助手 (30201023) ; 大島 徹 金沢大学, 医学部, 教授 (40183024) ; 橋本 琢磨 金沢大学, 医学部, 教授 (10124710) ; 永野 耐造 科学警察研究所, 所長 (20073679)
• キーワード: 救急医療 / 法医中毒学 / 臨床法医学 / スクリーニングシステム / 薬毒物動態

研究概要

1.REMEDiシステム等を用いて、本年度は以下の点で新知見を得た.
(1)REMEDiシステムデータの充実・改善:メチルエフェドリン等計5種の薬物をライブラリーに新規追加した。またREMEDiシステムでは半定量の機能しかない。そこでカルバマゼピン等計8種の薬物の検量線を作成し,同時的に定性・定量できるようにした。これにより薬物中毒の迅速診断が可能になったが、現在更に多数の薬物に対応するように追加中である。
(2)スクリーニング予備実験:市販感冒薬をボランティアに服用させ、それらを分析した。尿より、感冒薬成分であるメチルエフェドリンとその代謝物エフェドリンが検出された。血清からは薬物は検出されず、REMEDiシステムの検出感度の上で課題として残った。
(3)剖検試料・救急患者試料についての検討:各々19例、13例で薬物が検出された。剖検例では、交通事故死亡例試料から、治療レベルではあるがメチルエフェドリンとその代謝物エフェドリン更にジヒドロコデインが検出され、感冒薬服用が判明し、生前の状況が客観的に明らかになった。また救急例では、昏睡状態で病院搬送された患者の血清・尿をREMEDiシステムにより分析し、ブロムワレリル尿素中毒と診断し、治療の指針となる例があった。同例では、GC/MSと定量結果を比較し、高い相関が得られ(相関関数0.939、n=6)、同システムの正確性が示された。一方投与記録がない例で、リドカインが偽陽性として検出された例も散見され、現在、動物実験を含め検討中である。
2.薬毒物の動態について、これまで主として塩基性の薬物の体内動態、特に組織分布について検討してきた。今回この研究を更に展開し、細胞内オルガネラへの分布動態について検討した。その結果塩基性薬物の細胞内分布比は経時的に変化し、時間経過に伴って特にリソソームへの寄与が増大することがわかった。リソソームへの蓄積は薬効、毒性の発現に深く関与することから、今後の検討課題としたい。

研究成果

• [文献書誌] 西上 潤,大島 徹他: "固定臓器からの精神神経用剤(ジアゼパム及びクロルプルマジン)の分析" 日法医誌. 49. 補256 (1994)
• [文献書誌] 吉田 豊,大島 徹他: "薬毒物中毒例におけるREMEDi(薬物同定システム)の使用経験" 日救急医会誌. 5. 626 (1994)
• [文献書誌] 近藤稔和,大島 徹他: "出血性膵炎を伴ったカ-バメイト系殺虫剤の中毒死例" 法中毒. 12. 150-151 (1994)
• [文献書誌] 西上 潤,大島 徹他: "経口服用による覚醒剤急性中毒死の一剖検例" 法中毒. 12. 124-125 (1994)
• [文献書誌] 大辻雅彦,大島 徹他: "REMEDi-HS Systemを用いた薬毒物分析-第1報-" 法中毒. 12. 152-153 (1994)
• [文献書誌] 大辻雅彦,大島 徹他: "REMEDi-HS Systemを用いた薬毒物分析" 法中毒. 13. 38-48 (1995)
• [文献書誌] 大辻雅彦,大島 徹他: "REMEDi-HSシステムによるジフェンヒドラミンの分析及びGC-MS法による測定値との比較" 日法医誌. 49(発表予定). (1995)
• [文献書誌] Ohtsuji,M.,Ohshima,T.et al: "Screening of antihistamine agents(diphenhydramine)with urine samples by REMEDi-HS system" Proc 13th Int Conf.Alcohol Drug and traffic Safety(Aug.,1995,Adelaide). (発表予定). (1995)