研究概要 |
1.CD腸管特異蛋白cDNA、ゲノムDNAのクローニング CD腸管から抽出したRNAよりmRNAを溶出し、逆転写酵素を用いてcDNAを合成した。Dasらの方法に準じ粗蛋白を精製したが、ウェスタンブロットによる検索では粗蛋白がCD腸管に特異的ではないと判明し、スクリーニングに用いることは不可能であった。そのため健常腸管から抽出したmRNAに前述のcDNAをアニールさせ、ハイブリダイズしなかったcDNAを抽出(サブトラクション)した。このプローブを用いてライブラリーをスクリーニングし、塩基配列の決定を行っているが、今のところ特異的なクローンは得られていない。そのため少量の材料しか必要とせず、複数の検体を容易に比較できるArbitrarily primed PCR法を用いたクローニングを開始した。 2.CD腸管におけるMycobacteria、真菌およびウィルスの検出とその特異性の検討 CD,UC,対照の腸管組織の手術標本からDNAおよびRNAを抽出した。M.paratuberculosis (M.PTB)に特異的なプライマーを作成しNested PCRを行ったがアガロース電気泳動では特異的な産物は得られず、さらにドットおよびサザンブロッティングも追加して感度、特異性を高めた特異的な産物は得られず、M.PTBのCDへの関与は否定的と思われた。またクローン病における真菌類の食餌抗原としての関与を検討するため、Mucor racemosis,Sacchromyces cerevisiae,Candida albicansなどの真菌を認識するプライマーを作成し、Nested PCRを行ったが、いずれについても検出率は対照と差がなく、当施設で以前に報告した血清抗体価の成績と合わせ二次的な関与が示唆された。また麻疹、ムンプス、風疹ウィルスを認識するプライマーを作成し、Nested RT-PCRおよびサザンブロッティングで検討したが、いずれのウィルスにも特異的な産物は得られず、病因としての関与は否定的と考えられた。
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