研究課題
HCVの肝細胞障害発生機序および肝癌発生機序を解明するにはin vivoでのHCV発現モデルを作成することが必要である。本年度はリポソーム法を用いたin vivo遺伝子導入法によるラット肝でのHCV遺伝子の発現についての検討を行った。5'非翻訳領域を削ったHCVの全遺伝子配列を発現ベクターのβアクチンプロモーターの下流に挿入し、またレポーター遺伝子として大腸菌LacZ遺伝子を同様に挿入した。これらの発現ベクターをリポソームと混合し、これを6週令のSD雄性ラットの総胆管より肝内に注入した。LacZ遺伝子の発現ベクターを注入したラットでは、X-Ga1を用いた組織染色により、0.1%前後の肝細胞にβガラクトシダーゼの発現が見られた。この発現は遺伝子の注入後1日目より認められたが、7日後には消失しており、このシステムによる遺伝子発現は一過性であった。HCVの発現については、HCVの全遺伝子配列の発現ベクター注入2日後に肝を摘出し、RNAレベルの遺伝子発現をPCR法を用いて、またHCVコア蛋白の発現を免疫組織染色により検討した。肝より抽出した総RNAをDNaseI処理したものをサンプルとして、コア領域およびNS5領域に設定した2対のプライマーを用いてRT/PCRを行うと、それぞれ特異的な陽性バンドが検出されたが、同じサンプルを用いてRTを行わずにPCRのみを行うとこのバンドが検出されなかった。したがって、ラット肝内で発現ベクターに挿入されたHCVcDNAからRNAへの転写が行われていることが確認された。またマウスモノクロナルHCVコア抗体を用いて肝組織を酵素抗体法により染色すると、肝細胞質に顆粒状のDABの発色が認められた。今後、このHCV発現モデルを用いて、肝細胞障害の有無について検討していく予定である。
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