研究課題
1)アシアログリコプロテイン法を用いたHCVコア遺伝子発現動物モデルの作製HCVコア遺伝子発現ベクター/アシアログリコプロテイン複合体を作製し、クロロキンを腹腔内投与したラットの門脈内に注入した。2日後のラット肝より、HCVコア遺伝子の転写産物がPCR法により確認された。また、免疫組織染色により、肝細胞にHCVコア蛋白の発現が散在性に確認された。クロロキンを前投与することにより、HCVコア遺伝子のラット肝細胞へのターゲッティングが可能であった。2)HCV遺伝子発現動物モデルにおける肝障害発症の有無についての検討陽電荷リポソーム法を用いて、肝細胞においてHCVの全コーディング領域を発現するラットを作製した。HCVの発現期間は約1週間であった。このモデルにおいて、肝細胞障害が発生するかどうかを血清生化学的および組織学的に検討した。HCV遺伝子を導入したラットにおいて血清GPT値の有意の上昇はなく、また組織学的にもヒトの慢性肝炎に類似した肝障害は観察されなかった。またHCVコア抗体が血清中に出現するかどうかもあわせて検討したが、HCVコア抗体の陽性化は認められなかった。これらのことより、HCV遺伝子の発現はそれだけでは肝細胞障害性はなく、またHCV関連蛋白の肝細胞での発現そのものは、HCVに対する細胞性免疫あるいは液性免疫を誘導しないことが明かとなった。ヒトのHCV感染においては流血中に分泌されたウイルス粒子が抗原提示細胞に貧食され、宿主免疫系への抗原提示が持続的に行われていることが想定される。今後、我々が開発したHCV発現モデルにおいても、宿主免疫系にHCV抗原を効率よく提示させることによりヒトの肝炎に類似したモデルを作製することが可能になるものと考えられる。
すべて その他
すべて 文献書誌 (6件)