研究課題
一般研究(A)
(1)陽電荷リポソームとアシアログリコプロテイン(ASOR)レセプターを用いたin vivo遺伝子導入法の有用性について基礎的な検討を行った。(1-a)β-アクチンプロモーターの下流にLacZ遺伝子をつないだ発現ベクターを陽電荷リポソームと混合し複合体を形成させ、これをSDラットの胆管より逆行性に肝臓に注入した。2日後の遺伝子発現をin situ β-ガラクトシダーゼ染色にて検討した。プラスミドとリポソームのモル比を最適化することにより、ラット肝細胞に散在性に外来遺伝子の発現が確認された。遺伝子発現期間は約1週間であった。(1-b)ベクターDNAとASORの複合体をマウスに静注すると、注入したDNAの80%が肝臓に集積し、DNAを取り込んだ細胞はクッパー細胞ではなく肝細胞であった。取り込まれたDNAの分解を少なくするために、クロロキン投与後にLacZ発現ベクター/ASOR複合体をラットの門脈より注入したところ、肝細胞でのβ-ガラクトシダーゼの発現が確認された。(2)HCV発現モデルの開発。(2-a)陽電荷リポソーム複合体法を用いて9.1kbからなるHCVの全コーディング領域を含む遺伝子のラット肝への導入を行った。導入2日後のラット肝においてHCV遺伝子のRNAレベルでの発現がPCR法を用いて確認され、蛋白レベルの発現が免疫組織染色により確認された。HCV蛋白の肝細胞での発現は、C型慢性肝炎患者のHCVの発現パターンに類似していた。(2-b)ASOR法を用いてHCVコア遺伝子領域のラット肝での発現を行った。陽電荷リポソーム法と同様にラット肝においてHCV遺伝子のRNAおよび蛋白レベルでの発現が確認された。(3)陽電荷リポソーム法を用いたHCV発現動物モデルを用いて、肝障害の発症の有無を血清生化学的および組織学的に検討した。HCV遺伝子導入ラットを経時的に観察したが血清GPT値の有無の上昇は認められず、また組織学的にもヒトに類似した肝炎は認められなかった。また血清注のHCVコア抗体の出現についても検討したが、陽性化は認められなかった。
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