研究概要 |
平成5年度実験結果をもとに、小口径人工血管移植時の閉塞モデルを作成した。家兎(New Zealand White Rabbit)総頸動脈に内径3mm,長さ1.5cm,繊維長30μmのePTFEグラフトを移植し、以下の4群に分け比較検討した。I群;血管内皮細胞を剥離損傷直後に人工血管を移植、II群;内皮細胞剥離後2週間の高コレステロール食負荷後に人工血管を移植、III群;コントロール群・内膜剥離操作非施行群,(以上の3群はテクノ型ePTFEを使用)、IV群;Gore-Tex型ePTFE移植・内膜剥離非施行群。結果はI〜III群間には明らかな差異を認められず、IV群で内膜肥厚が高度に認められた。この肥厚した仮性内膜はHHF-35染色陽性で、平滑筋細胞由来であることが示唆された。異種グラフトによる内膜肥厚の相違は興味が持たれ、現在、繊維長の異なるePTFEグラフト、抗血栓物質(Heparin,MPCなど)吸着グラフトによる同様の実験を試行している。臨床的検討では、吻合部閉塞を来した人工血管と宿主血管を再手術時摘出し、筋型アクチン,Mφ,増殖細胞関連抗原(Ki67),エラスチンなどの免疫染色を行った。吻合部血栓を生じた部位は肥厚した仮性内膜を認める例のみならず、仮性内膜内で平滑筋細胞が途絶した部位に血栓形成が認められる例が認められた。即ち、強いレオロジー因子の影響する吻合部で仮性内膜の剥離が重要な因子であることが示唆され、小口径人工血管の遠隔開存向上のための内皮化促進の方向性を追求する際に留意する必要があると考えられた。
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