研究分担者 |
中村 祐輔 東京大学医科学研究所, 分子病態施設, 教授
小里 俊幸 浜松医科大学, 医学部, 助手 (00252180)
椙村 春彦 浜松医科大学, 医学部, 助教授 (00196742)
藤田 道也 浜松医科大学, 医学部, 教授 (60014031)
|
研究概要 |
1)遺伝子非ポリポ-シス大腸癌(HNPCC)の原因遺伝子(hMLH1,hMSH2)について遺伝子解析を行い,われわれが家系調査,追跡を行っているHNPCCの一家系でhMLH1 geneのexon16,codon582(CTC)において点突然変異(GTC)を検出した(中村祐輔教授). さらに,変異が検出されたこの家系にたいし家系診断を行った.すなわち14名の家系構成員より口腔内洗浄液を採取して粘膜脱落細胞のDNAを抽出し,codon582の変異の有無を制限酵素MspI消化法,対立遺伝子特異的PCR法,PCR直接塩基配列決定法の3法を用いて検索したところ,14名中3名にgene carrierを見出した.この3名中1名はすでに発癌しており,残りの2名で発症前診断がなされたことになる.現在慎重にこれら症例をフォローアップ中である. 2)HNPCC遺伝子群の機能は,DNAミスマッチ修復であることが判明した.これら遺伝子に変異を生ずれば,癌病巣でDNA複製エラーが高頻度に出現すると考えられる.われわれはHNPCC,多発癌,一般大腸癌の癌巣におけるマイクロサテライト領域でのDNA複製エラーの出現を検索し,HNPCC:60%,多発癌:22%,一般大腸癌:5%に複製エラーを検出した.DNA複製エラーの大腸癌発ガンにおける役割とこれが二次発ガンのマーカーとなりうるか解析中である. 3)一般大腸癌について,DCC遺伝子の変異をマイクロサテライトマーカーを用いた第18番染色体長腕の欠失の有無で検出し,大腸癌の進行度と予後について解析中である. 4)大腸多発癌についてK-ras,p53遺伝子変異を解析し,同一個体に生じた多発癌といえどもこれら遺伝子の変異は一定ではなく,ポリクローナルな発ガン機構が推測された. 平成7年度は,HNPCCを主体に解析を進め,大腸癌の発ガン機構の解明と診断治療体系の確立を目標とする.
|